複数GPUならRyzenとThreadripperのどちら?PCIe配線と増設条件で比較

目次
GPUを二枚にするなら、CPUもThreadripperに決まってるわよね!
枚数だけでは決まらないんだよ。GPUとほかのカードを、どの幅でつなぐか見よう。
まずは、Ryzen 9 9950Xと、GPU用の通信路をx8+x8に分けられるマザーボードで足りるかを見てみましょう。二枚を必要な配置で使えるなら、GPUの枚数だけを理由に高価な環境へ移る必要はありません。
Threadripperの拡張性が欲しくなるのは、GPUに加えて高速ネットワークカードや複数のNVMe、大容量RAMを使おうとすると足りなくなるときです。CPUの価格を比べる前に、つなぎたい機器を並べ、Ryzenでは何が足りないのかを確かめます。
GPU二枚・RAM 64GBを基準に配置を考える
ここでは24GBのRTX 3090二枚、RAM 64GB、NVMe SSD一本を使い、対応するllama.cppでLLMを二枚へ分ける構成を基準にします。比較するCPUはRyzen 9 9950XとThreadripper 7960Xです。二枚挿せることと、同じモデルが速くなることは別なので、後述の第三者測定からCPU変更の速度差は推測しません。
GPUとSSDを共通費にし、CPU・板・64GBの対応メモリ・冷却の差額を出すのが比較の目的です。ただし、調べた販売例は欠品や未確定の見積条件を含み、注文できる二構成の総額まではそろっていません。この記事で判断できるのは必要な配線と増設条件までです。予算差は未確定として、まずRyzenで足りない接続を特定しましょう。
まず必要レーンを足す
PCIeレーンはCPUとGPUなどの機器を結ぶ通信路で、x16やx8は使うレーンの幅です。GPUを二枚使うなら、板がx8+x8へ分けられるかを調べ、その接続幅で予定の処理を終えられるか確認します。挿せる枚数と、十分な幅で使える枚数を分けて考えるわけです。
次に、GPU以外で使いたいカードも加えます。たとえば、次のように書き出してみてください。
- GPU 1枚目: x16
- GPU 2枚目: x8またはx16
- 25GbE NIC: x8
- NVMe拡張カード: x4~x16
- キャプチャカードやHBA: 必要な幅
HBAはストレージ接続用、NICはネットワーク用のカードです。上の幅は整理の例なので、実際に買う製品が必要とする接続幅へ置き換えます。そのうちCPUへ直接つなぎたいものを、次の式へまとめます。
必要なPCIeレーン = GPU + NIC + HBA + CPU直結させたいNVMe
ただし、この合計だけで「載る」とは決まりません。機器によってはチップセットを経由したり、ほかのスロットとレーンを分け合ったりします。必要量が書けたら、次に板の配線と突き合わせましょう。
x16形状でもx16動作とは限らない
写真で長いスロットを二本見つけても、両方がx16で通信するとは限りません。x16のカードを挿せる形でも、実際の配線はx8やx4ということがあります。説明書で、次のような条件を探してください。
- 1枚使用時はx16
- 2枚使用時はx8+x8
- 2本目はx4
- M.2を使うと一部スロットの帯域が変わる
- チップセット経由になる
確認するときは、マザーボードの仕様表だけでなく、取扱説明書の「拡張スロット」と「共有帯域」の注記を開きます。「GPUをどのスロットへ挿すか」「SSDをどのM.2へ付けるか」を同じ紙に書き込み、全部付けたときの幅を記入しましょう。
GPU二枚だけなら問題がなくても、M.2 SSDを足したら二枚目の幅が変わる場合があります。予定するSSDやカードを全部使った状態で、PCIe構成表を読みましょう。あとで一台ずつ足す予定でも、その最終配置まで見ておくと安心です。
実際のマザーボードではM.2の場所で変わる
例に取るのはASUS ProArt X870E-CREATOR WIFIです。Ryzen 9000/7000シリーズでは二つのCPU側スロットをx8+x8で使えますが、M.2_2を有効にすると一つ目はx8、二つ目はx4になります。2枚目のGPUにもx8を確保する計画なら、このM.2を避ける配置が必要です。Ryzen 8000系では条件が異なるため、この例へ混ぜません。
| 構成例 | 判断 |
|---|---|
| 9950X+GPU2枚+M.2_2を使わないSSD配置 | x8+x8を使う候補。GPUの厚みとケース配置が成立すればRyzenを残す |
| 同じ板でM.2_2も使用 | 二枚目x4へ変わる。SSDの配置変更を先に考える |
| GPU2枚に加えCPU直結NVMe複数・高速NIC拡張を要求 | レーンと物理スロットが足りるTRX50を比較する |
二枚へx16ずつ割り当てたいときの比較例が、Pro WS TRX50-SAGE WIFIです。PCIe 5.0のx16スロット二本とx8動作一本、4チャネルのDDR5 ECC RDIMMに対応します。Ryzen機のDDR5 UDIMMは流用する前提にできないので、板だけでなくメモリ一式の交換費用も加えます。
RyzenとThreadripperの拡張性
どれだけの接続が欲しいか分かったら、AMDのプラットフォーム仕様と比べてみます。次の表は公式仕様によるプラットフォームの上限です。実際の板の配線とは分けて読みます。
| 構成 | PCIeレーンとメモリ |
|---|---|
| Ryzen 9 9950X | 使用可能なネイティブPCIeレーン24本。2チャネル、最大256GB DDR5 UDIMM。 |
| Threadripper / TRX50 | 合計88本使用可能、うちPCIe 5.0は最大80本。4チャネル、最大1TB RDIMM。 |
| Threadripper PRO / WRX90 | 合計144本使用可能、うちPCIe 5.0は最大128本。8チャネル、最大2TB RDIMM。 |
9950Xのネイティブレーンは合計28本ですが、使用可能なのは24本です。表の数字を比べるときは、合計なのか使用可能数なのか、PCIe 5.0だけの数なのかをそろえてください。Threadripper系への追加費用は、CPUの計算性能とともに、多くの機器やメモリを接続する余地に払うものです。
メモリも、最大容量がそのままどの板でも使えるわけではありません。注文するCPU、マザーボード、メモリの組み合わせで、容量と枚数が対応するかを確かめましょう。
Ryzenで十分な構成
次のような構成なら、まずRyzenで見積もってみるのがおすすめです。
- GPUは1枚
- GPU2枚でもx8+x8で用途を満たす
- 高速NICやHBAを追加しない
- NVMeの本数が少ない
- 256GB以下のメモリで足りる
- プラットフォーム総額を抑えたい
ローカルLLMの処理によっては、GPUへモデルを載せた後、PCIeを常時いっぱいまで使いません。自分の仕事がx8+x8で十分に終わるなら、x16+x16のためだけにCPU、板、メモリを替えずに済みます。
一方、モデルをどう分けるか、GPU間でどれだけ転送するかによって影響は変わります。「LLMならx8で同じ」とは決めず、使うモデルと実行ソフトの条件で待ち時間を確かめてください。
Threadripperが向く構成
Ryzenの配置表を埋めてみて、次のような機器まで同時に使えなければ、Threadripper系へ比較を広げます。
- GPUを2~4枚使う
- GPUに加えて10/25/100GbE NICを使う
- NVMeを多数CPU直結したい
- HBAや高速ストレージカードを追加する
- 256GBを超えるメモリが必要
- RDIMMと多チャネルメモリを使いたい
まずTRX50のPCIe 5.0最大80レーンと4チャネルメモリで必要量を満たせるか見ます。そこでも足りなければWRX90の最大128レーンと8チャネルを比べましょう。GPU枚数が多いだけで最上位へ進まず、増やしたい機器を実際に割り当てて選びます。
物理的にGPUが入るかも確認する
配線が足りたら、今度はカード本体が収まるかを見ます。RTX 5090級の大型GPUが隣のスロットを覆うと、そこにレーンがあっても別のカードを挿せません。仕様表とケース図で、次の寸法や条件を合わせてください。
- GPUの厚さ
- スロット間隔
- 電源ケーブルの空間
- ケースの長さ・高さ
- 吸気経路
- 電源容量
4スロット近いGPUを二枚使うなら、スロット同士の距離で配置が決まることもあります。カードが挿さるだけで終わらせず、電源ケーブルを無理なくつなぎ、両方へ吸気を送れるかまで見ましょう。
二枚の3090で70Bを扱った実例がある
Harris Oldroydの公開測定では、Threadripper PRO 3945WXとRTX 3090二枚でLlama 3.3 70B Q4_K_Sを全層GPUへ配置しています。llama-bench fc6545d、入力512・生成256、KVはQ8_0、Flash Attention有効、各GPU275W制限、三回平均という条件です。生成速度は空のKVで31.91、32Kの既存KVでは18.50トークン/秒でした。分割比は1:1ですが、分割モードは記録されていません。
二枚で動いた記録があるなら、私も同じくらい待てば使えるの?
モデルと設定、それまでの会話の長さも合わせたいね。二枚という枚数だけで、同じ待ち時間になるとは決められないんだよ。
この記録から分かるのは、対応ソフトで24GBのGPU二枚を使った例と、会話が長くなると同じ構成でも生成速度が変わることです。RAM容量も同条件のRyzen測定もそろっていないため、Threadripperへ替えた効果や、Ryzenとの速度差は読めません。レーン数を増やせば会話による待ち時間まで消える、という話ではないわけです。
ThreadripperはCPU価格だけで比較しない
GPU二枚とRAM 64GBをそろえる見積もりは、次の組み合わせから始めます。メモリは容量だけを一致させ、UDIMMとRDIMMを交換可能とは扱いません。掲載品があることと、この板・CPU・BIOSで動作確認済みであることも別です。
| 費目 | Ryzen側の照合対象 | Threadripper側の照合対象 |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen 9 9950X | Ryzen Threadripper 7960X(24コア・350W) |
| 板 | ProArt X870E-CREATOR WIFI | Pro WS TRX50-SAGE WIFI |
| RAM 64GB | Crucial CT2K32G56C46U5・32GB×2 DDR5 UDIMM | Kingston KF556R36RBK4-64・16GB×4 DDR5 ECC RDIMM。メモリ対応表と設定を要照合 |
| 冷却 | Noctua NH-D15 G2・AM5対応 | Noctua NH-U14S TR5-SP6・メーカーCPU対応表で7960X対応 |
| GPU・SSD等 | RTX 3090 24GB×2、NVMe SSD一本を共通費とする | 左と同じ型番・数量。ケース・電源・冷却の成立を両方で確認 |
価格確認を一部だけ済ませても、残りを0円として総額にはできません。次の掲載額は未完成の見積資料で、購入可能なセット価格ではありません。
| 公開販売資料(2026年10月24日取得) | 税込掲載額 | 採用できない・残る条件 |
|---|---|---|
| ツクモの7960X | 269,800円・送料無料表示 | 完売表示。注文可能価格にはしない |
| アプライドのNH-U14S TR5-SP6 | 21,980円 | SOLD OUT。配送先の制限もある |
| ドスパラのCT2K32G56C46U5 | 注文用価格は未確定 | 取得できた掲載資料に在庫なし。他店価格・在庫と混ぜない |
| パソコン工房のProArt | 92,980円・送料無料 | 当日出荷・カート表示あり。ほかの全費目と同時にそろえる |
7960XとTR5クーラーだけの掲載額の小計は269,800+21,980=291,780円です。ここには板も64GB RDIMMも含まず、二製品とも欠品なので、導入予算として使える合計ではありません。別案の9960Xも販売ページを調べましたが、取得時に価格・在庫を確定できませんでした。Ryzen側の全費目とそろった送料込み総額、および差額は未算出です。
追加費用で得るものは、ProArtのx8+x8からTRX50-SAGEのx16+x16への接続幅と、追加スロット・CPU直結NVMeの配置余地です。3090はPCIe 4.0のカードなので、PCIe 5.0スロットへ挿してもGPU自体が5.0へ変わるわけではありません。x8+x8で用途を満たせるなら、この余地へ払う理由は薄くなります。逆にGPU二枚と追加カードが同時に必要なら、差額の見積もりを取る価値があります。
使える配置が見つかったら、最後に構成全体の値段を比べます。Threadripperへ移る場合はCPUに加えて、次の部品も見積もり直してください。
- TRX50またはWRX90マザーボード
- RDIMM
- 対応CPUクーラー
- 大型ケース
- 大容量電源
- GPU支え金具
- 必要に応じて高性能ファン
Ryzenで無理なく全部載れば、その差額をGPUやSSDへ残せます。反対に、接続幅や冷却を何か所も妥協するなら、Threadripperで余裕のある配置へまとめる方が扱いやすいかもしれません。見積もりの横に「この追加費用で何を増やせるか」も書くと、払う理由がはっきりします。
どちらを選ぶ?
二枚のGPUと少数のSSDなら、9950X+ProArtのようなx8+x8対応板で、M.2との共有を避けた配置から検討します。二枚へx16ずつ割り当て、ほかのカードも載せる必要があればTRX50-SAGEなどを比べます。さらに多いレーンや8チャネルを使うならWRX90です。迷ったら、次の順で構成表を埋めてみてください。
- GPUの本数を決める
- 各GPUに必要なPCIe幅を決める
- NVMe・NIC・HBAを足す
- 必要メモリ容量を決める
- 候補マザーボードの配線図へ照合する
- Ryzenで収まらなければThreadripperへ上げる
- ThreadripperではTRX50とWRX90のどちらが必要か分ける
構成表にGPUの寸法、電源、冷却も加え、実際に組める候補だけで総額を比べましょう。将来の増設分も「いつか何か」ではなく、GPUやNICの本数として書いてみてください。必要な拡張性と、今は払わなくてよい費用を分けやすくなります。
完成PCとして探す場合は、ローカルAI向けBTO PCの選び方も確認してください。
まとめ
- Ryzen 9 9950XはネイティブPCIeレーン28本・使用可能24本、デュアルチャネルDDR5・最大256GB
- TRX50はPCIe 5.0を最大80レーン、4チャネルRDIMM・最大1TB、WRX90は最大128レーン、8チャネル・最大2TBを提供する
- GPU 1枚や、マザーボードの配線条件を満たす2枚構成ならRyzenで総額を抑えられる場合がある
- 複数GPUに加えて高速NIC・多数のNVMe・大容量メモリを同時に使うならThreadripper系の拡張性が生きる
- x16形状のスロットがあっても電気的にx16とは限らないため、購入するマザーボードの配線図を必ず確認する




