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Perplexity Hybrid Compute on Macとは? 24GB要件・Lily・クラウドとの境界を整理

Perplexity Hybrid Compute on Macとは? — 24GB要件・Lily・クラウドとの境界を整理
目次

Perplexity Hybrid Compute on Macとは

Perplexityは2026年9月1日、Mac向けのHybrid Computeを公開した。

これはPerplexity Computerの処理をすべてクラウドへ送るのでも、すべてローカルLLMだけで完結させるのでもない。1つのタスクを、

  • クラウド:高度な推論、Web検索、計画
  • Mac:機密ファイル、センシティブ情報、端末上の操作

に分けて実行する仕組みだ。

Perplexityは単にMacでローカルモデルを動かすだけでなく、クラウド側の調査・推論とMac側の機密データ処理を一つのタスク内で分担する。

公式にはApple Silicon / macOS 15以降 / 24GB以上の統合メモリという明確な導入条件が示されており、ローカル側の推論を高速化する専用エンジンLilyも開発されている。

そのためHybrid Computeは、MacでローカルAIを使いたい人にとって、ソフトウェアの話だけでなくMacのメモリ容量をどう選ぶかにも関係する。

24GBは対応条件。購入時は用途別の余裕も見る

Mac向けHybrid Computeの公式要件は次の通りだ。

項目 公式条件
CPU / SoC Apple Silicon
OS macOS 15以降
メモリ 24GB以上の統合メモリ
対象プラン Perplexity Pro / Max / Enterprise
導入 Perplexity Macアプリからローカルモデルをダウンロード

24GB以上なら対応条件を満たす。

ただし、24GB = どんなローカルAI処理でも余裕のある推奨容量と読み替えるべきではない。

Macの統合メモリは、モデル重みだけに使われる専用VRAMではない。macOS、アプリ、モデル、KVキャッシュ、推論中の作業用メモリなどが同じメモリ空間を使う。

したがって新しくMacを買う場合は、24GBを「Hybrid Computeが動く公式ライン」と見たうえで、長いコンテキスト、複数アプリ、将来の大型モデルまで使うなら上の容量を検討した方がよい。

Hybrid Computeは完全ローカルではない

名前から誤解しやすいが、Hybrid Computeは完全オフラインのローカルLLM環境ではない

役割は明確に分かれている。

処理 主な実行場所
機密ファイルの読み取り Mac
センシティブ情報の処理 Mac
端末上の操作 Mac
Web検索 クラウド
最先端モデルによる高度な推論 クラウド
タスク全体の連携 Perplexity Computer

狙いは「クラウドを使わない」ことではなく、クラウドへ送る必要のない機密情報をMacに残したまま、クラウドAIの強さも使うことにある。

OllamaやLM Studioで完全に閉じたローカルチャットを作りたい人とは、目的が違う。

プライバシーゲートは何をしているのか

Hybrid Computeでは、Mac上のプライバシーゲートが端末外へ出る情報を制御する。

Perplexityの説明では、保護されたファイルの内容がクラウドへ渡る前に、プライバシーゲートが状況に応じて、

  • センシティブ情報をマスクする
  • 情報をローカルに残す
  • 外部送信を拒否する
  • ユーザーへ許可を求める

といった処理を行う。

名前、住所、口座番号、機密情報なども端末上の分類器で検出対象になる。

Enterpriseでは、管理者が組織単位で「ローカルに残す情報」「マスクしてよい情報」「ユーザー承認が必要な情報」を設定し、端末外へ情報が出たタイミングを監査できるとしている。

ただし、プライバシーゲートがあるからといって「どの情報も絶対に外へ出ない」と雑に理解するのは危険だ。

Hybrid Computeはクラウド機能を意図的に併用する製品である。重要なデータを扱う場合は、送信される情報の扱い、組織ポリシー、接続先を確認して使う必要がある。

ローカルではどのモデルを使うのか

公開時点のHybrid Computeは、公式に3つのローカルモデルを案内している。

  • Gemma 4 E4B
  • Qwen3.6 35B-A3B
  • Perplexity モデル

中でも技術的に詳しく公開されているのがQwen3.6-35B-A3Bだ。

Qwen3.6-35B-A3Bは総パラメータ約35BのMoEモデルで、1 トークンあたりに有効になるパラメータは約3B。Perplexityはこのモデル向けにApple Silicon専用の推論エンジンLilyを作っている。

Lilyとは:MLXを使わない専用ローカル推論エンジン

MacでローカルLLMを動かす代表的な経路の一つがAppleのMLX / MLX-LMだ。

一方、PerplexityのLilyは汎用実行環境ではなく、Apple SiliconとQwen3.6-35B-A3Bへ強く特化した推論エンジンだ。

構成は、

  • Rust 実行環境
  • OpenAI互換のチャット生成API
  • カスタム Metal カーネル

からなり、PerplexityによればPyTorchもMLXも推論パスには入らない。

汎用性よりも、決まったモデルアーキテクチャとApple Siliconのハードウェア特性に合わせてカーネル、データ転送、スケジューリングを詰める方針だ。

Q4で約19.4GB。それでも24GBをそのまま「余裕」とは言えない

Perplexityの技術記事によると、Lilyで使うQwen3.6-35B-A3Bチェックポイントはグループ単位のアフィン4bit量子化を採用する。

約70GBのBF16重みを約19.4GBまで縮小し、Macの統合メモリへ常駐しやすくしている。

ここだけを見ると「19.4GBなら24GB Macで約4.6GB余る」と計算したくなるが、購入判断としては単純すぎる。

必要なのは重みだけではない。

  • OSと通常アプリ
  • 実行環境
  • KVキャッシュ
  • 再帰状態
  • プロンプト処理用の一時データ
  • 長いコンテキスト

もメモリを使う。

公式が24GBを対応下限としていることと、24GBがあらゆる使い方で快適であることは別だ。

Lilyはどのくらい速いのか

PerplexityはM5 Max搭載MacBook ProでLilyとMLX-LMを比較している。

条件は40コアGPU / 128GB統合メモリ / Qwen3.6-35B-A3B Q4 / バッチ 1。256〜128K トークンまで10種類の長さを測定した結果、Lilyは平均で、

  • 入力処理性能:MLX-LMの1.23倍
  • 生成処理性能:MLX-LMの1.35倍

だったとしている。

4Kプロンプト / 4K生成コンテキストの測定では、

Runtime Prefill Decode
Lily 5,749.9 tok/s 186.6 tok/s
MLX-LM 4,737.5 tok/s 140.9 tok/s

という値が示された。

ただし、これはM5 Max 128GBでQwen3.6-35B-A3Bを動かしたPerplexity自身のベンチマークである。

24GB Macで同じ速度が出るという意味でも、LilyがあらゆるモデルでMLX-LMより速いという意味でもない。

なぜApple Siliconで専用最適化するのか

Apple SiliconではCPUとGPUが統合メモリを共有する。

大きなモデルを別のGPU VRAMへコピーせず置けることはローカルLLMで大きな利点だが、統合メモリだからデータ転送が無料になるわけではない。

PerplexityはLilyで、

  • MoE エキスパートルーティングをGPU上に維持
  • 4bit 重みを必要なタイルだけ復元
  • Gated DeltaNetの状態をチップ内に保持
  • GQAで共有されるKV データを再利用
  • プロンプト長やコンテキスト長に応じてカーネルを切り替え

といった最適化を行っている。

つまりApple Siliconの強みは単なる「大容量メモリ」ではなく、モデルアーキテクチャとメモリ帯域、Metal実行系を合わせて最適化できることにもある。

投機的生成処理は必ず速くなるわけではなかった

技術記事で面白いのが、Lilyでは投機的生成処理がバッチ 1の生成処理を18%遅くしたという結果だ。

一般には高速化手法として知られるが、Qwen3.6-35B-A3BのMoE構造とこのハードウェア/処理では、ドラフトトークンの検証が効率の悪い形状になり、エキスパート重みの読み出しも増えたという。

これは「投機的生成処理は遅い」という一般論ではない。

むしろローカルAIでは、有名な高速化手法でもモデルアーキテクチャ・ハードウェア・バッチ条件によって逆効果になり得ることを示す例として重要だ。

24GB・32GB・64GB以上のMacをどう考えるか

Hybrid Compute目的だけでMacを選ぶなら、公式要件と実運用の余裕を分けて考えたい。

統合メモリ 考え方
16GB以下 Hybrid Computeの公式要件外
24GB 公式対応ライン。まず機能を使うための最低帯
32〜48GB OSや他アプリ、コンテキストにある程度余裕を取りやすい
64GB以上 大きなローカルモデルや長いコンテキスト、複数用途にも広げやすい
128GB級 大規模モデル・研究用途まで含めた上位帯。公式Lily ベンチマークも128GB機で実施

これはPerplexityが各容量の性能を保証した表ではなく、ローカルAI用途の購入判断を整理したものだ。

Hybrid Computeだけが目的なら、いきなり128GBが必要なわけではない。一方でローカルLLMを幅広く試したいなら、24GBぎりぎりよりメモリを増やす価値は大きい。

Mac miniを常時稼働させる使い方も公式が想定

Perplexityは、ローカル推論へ外出先からアクセスしたいユーザー向けに、専用Mac miniを常時稼働させてiPhoneからリモート制御する使い方も紹介している。

これはローカルAIの運用として興味深い。

高性能なメインMacを毎回使うだけでなく、メモリを積んだMac miniを自宅のローカルAI ノードとして置き、必要な処理をそこへ寄せる選択肢になる。

ただし、常時稼働を前提に買う場合は本体価格だけでなく、必要メモリ、ストレージ、リモートアクセス、停電や再起動後の復旧なども含めて考えたい。

Ollama・LM Studioとは競合するのか

一部は競合するが、役割はかなり違う。

Ollama / LM Studioが向くケース

  • 好きなオープン重みモデルを選びたい
  • APIサーバーとして使いたい
  • 完全ローカル構成を自分で管理したい
  • Perplexity Computer以外のアプリから利用したい

Hybrid Computeが向くケース

  • Perplexity Computerを日常的に使う
  • クラウドの調査能力を残したい
  • 機密ファイルだけ端末内で扱わせたい
  • モデル・プライバシーゲート・エージェント処理の連携を一体で使いたい

Hybrid Computeは汎用実行環境の代替というより、Perplexity Computerの中へローカル推論を組み込んだ製品機能と見る方が正確だ。

完全ローカル派にも重要なニュースである理由

Hybrid Compute自体はクラウドを利用する。

それでもここで扱う価値があるのは、大手AIサービスがローカルモデルを「おまけのオフラインモード」ではなく、エージェントワークフローの正式な実行層として採用し始めているからだ。

さらにPerplexityは、

  • 24GB 統合メモリを実用ラインとして明示
  • 35B MoEをQ4で端末常駐
  • Apple Silicon専用実行環境を開発
  • プライバシー判定もon-デバイスへ配置
  • 常時稼働Mac miniという運用まで提示

している。

ローカルAIの価値が「チャットを自分のPCで動かせる」から、クラウドエージェントの中で機密データを扱う実行基盤へ広がっている事例と言える。

導入手順

公式の開始手順はシンプルだ。

  1. 最新のPerplexity Macアプリをインストールする
  2. ローカルモデルを1クリックでダウンロードする
  3. モデル選択器でハイブリッドを選ぶ
  4. タスクに使うローカルモデルとクラウドモデルを選択する

最初から重要な機密データを任せるのではなく、プライバシーゲートがどの情報をローカルに残し、どの場面で許可を求めるかをテスト用ファイルで確認してから本格利用した方が安全だ。

まとめ

  • Perplexity Hybrid Compute on Macは、クラウド側に調査・推論・計画、Mac側に機密ファイル処理と端末操作を分担させるローカル・クラウド併用機能
  • 公式要件はApple Silicon、macOS 15以降、24GB以上の統合メモリで、Pro・Max・Enterprise向けに提供されている
  • ローカル側ではQwen3.6 35B-A3Bなどを利用し、プライバシーゲートが端末外へ出る情報を制御する
  • Perplexityの専用推論エンジンLilyはQwen3.6 35B-A3BとApple Silicon向けに最適化され、M5 Max 128GBでMLX-LMより高い入力処理・生成処理性能を示した
  • 24GBは機能を開始できる公式下限であり、長いコンテキストや他アプリとの同時利用まで含めた万能推奨容量ではない
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