ビジネス・社会実践ガイド
AI Agentのツール権限はどう決める?読み取り・下書き・実行を分離する

目次
AIエージェントへ「CRMへのアクセスを許可する」とだけ設定すると、何を読め、何を下書きし、何を変更でき、誰の権限で実行するかが混ざる。最小権限は役割名を付けることではなく、エージェントができる操作を小さく分けることから始まる。
Copilot Studioのセキュリティガイドは、不要な外部連携、参照元、機能、利用経路をデータ利用方針で制限し、開発から本番へのリリースを審査することを勧める。OWASPが扱うExcessive Agencyの問題でも、意図しないモデル出力が強いツール権限へ届かない設計が重要になる。
能力を四段に分ける
| 能力 | 例 | 追加で決めること |
|---|---|---|
| READ | 社内文書を検索、予定を参照 | 対象参照元、検索範囲、利用者権限 |
| DRAFT | メールやCRM更新案を作る | 保存先、公開前の確認者 |
| WRITE | レコード更新、チケット作成、送信予約 | 対象項目、承認、ログ、復旧手順 |
| ADMIN | 権限変更、外部連携追加、公開設定 | 職務分離、二者確認、直接操作 |
ここでのREAD/DRAFT/WRITE/ADMINは設計を整理するための編集上の分類で、すべてのAPIが同じ権限名を持つわけではない。DRAFTは送信や本処理を確定しない段階だが、外部サービスへ下書きを保存すれば書込み操作になる。実際のAPIスコープと保存先の権限を別に確認する。WRITEは対象を限定し、復旧方法を設計する。ADMINは通常のエージェントから外し、人による管理を基本方針とする。
ツールごとの能力表
| ツール | READ | DRAFT | WRITE | ADMIN | 必要な証跡 |
|---|---|---|---|---|---|
| 文書検索 | 指定フォルダーだけ | 回答案 | なし | なし | 参照元、利用者、検索ログ |
| CRM | 顧客項目の一部 | 更新案 | 承認後の限定項目 | なし | 対象レコード、差分、承認 |
| メール | 宛先候補 | 本文案 | 承認後の送信 | なし | 宛先、本文、送信ログ |
| 権限管理 | なし | なし | なし | 人が直接実行 | 変更理由、二者確認 |
表に置けないツールは接続しない。モデルが「この操作は必要」と判断しても、システム側が認可しなければ実行できない状態にする。
方針と実装をつなぐ
Microsoftの資料では、データ利用方針で外部連携、参照元、機能、利用経路などをテナントや環境ごとに管理できる。設計では次の順に決める。
- 業務で必要なREADだけを列挙する
- DRAFTで人が確認できる形にする
- WRITEは一操作ずつ対象と復旧手順を定義する
- ADMINをエージェント権限から除く
- ログと定期レビューで、実際に使われた権限を見直す
人間承認を置いても、エージェントにADMINを与えれば影響は大きい。READだけでも機密情報の取得・漏えいリスクは残る。承認なしで許容する業務は、取得範囲と出力先を限定したうえで決める。承認の前に能力を減らす。これがAIエージェントの権限設計で最初にすることである。
まとめ
- エージェントの権限は「利用可」ではなくREAD/DRAFT/WRITE/ADMINへ分ける
- 入力文に「安全に実行」と書いても、外部連携やシステムの権限チェックは置き換えられない
- WRITEとADMINには対象、認証、承認、ログ、復旧手順を個別に決める
- 未使用外部連携、公開利用経路、参照元は最初から許可しない