ビジネス・社会実践ガイド
生成AI SaaSをセキュリティ審査するとき何を聞く?学習利用・保持・subprocessorを分ける

目次
生成AI SaaSの審査で「入力は学習に使われますか」と一問だけ聞いても、導入の可否は決まらない。入力がどこに保存されるか、誰が見られるか、外部連携から何を読むか、削除や監査をどう扱うかが残るからだ。
OpenAI、Anthropic、Google Workspaceの商用向け資料は、データ利用や管理の説明を出している。ただし対象プラン、契約、地域、接続設定が違えば、同じ説明をそのまま適用できない。NIST AI RMFの考え方に沿って、主張でなく確認できる根拠・証跡を集める。
契約前の質問票
| 項目 | 提供会社へ聞く質問 | 回答として残す証跡 | 未回答なら |
|---|---|---|---|
| 学習利用 | 入力・出力をモデル改善へ使う既定と明示的な同意は何か | 対象プランの利用規約・データ利用方針 | 機密データを入れない |
| 保存・削除 | 会話、ファイル、ログ、バックアップの保持と削除はどう違うか | 保持条件文書・設定画面 | 保存期間を仮定しない |
| 再委託先 | 処理・保存・サポートで関与する第三者は誰か | 現行一覧と地域 | 契約審査へ戻す |
| 外部連携 | Drive、CRM、Webなど何を読め、誰の権限で動くか | 外部連携仕様・権限設定 | 接続を有効にしない |
| アクセス | 管理者、提供会社 サポート、利用者は何を見られるか | 役割・監査・サポート説明 | 役割を分ける |
| インシデント | 通知、窓口、証跡、地域要件は何か | 契約・サポート条件 | 対応責任を決めない |
質問票の「はい」を合格の印にしない。対象プラン、対象テナント、取得日、回答者、リンクを同じ行に残す。
データの流れを一枚にする
審査対象の利用例ごとに、次を線で結ぶ。
利用者 → 入力 → AI SaaS → モデル処理 → 保存・ログ → 外部連携 → 出力 → 人の確認
外部連携を使う場合、入力欄に貼り付けた文章だけではない。Googleの管理資料では、Gemini EnterpriseからWorkspaceデータへのアクセスを管理者が制御する。Gemini EnterpriseのライセンスとWorkspace契約は同一とは限らず、対象エディションを確認する。つまり「外部連携を使う」こと自体が新しいデータ経路であり、対象範囲と権限を確認する必要がある。
結論を急がない条件
- 個人プランの説明しかない
- 会話だけの保存説明でファイルや監査ログが抜けている
- 再委託先・地域・サポートの範囲が不明
- 接続するデータソースと最小権限が決まっていない
- 提供会社の紹介ページだけで契約条件を代用している
セキュリティ審査の目的は、SaaSを安全と宣言することではない。利用予定のデータをどの条件なら渡せるか、どの条件なら渡せないかを契約前に決めることである。
まとめ
- 「学習に使わない」だけでは、保存、再委託先、外部連携、権限、削除の確認が残る
- 同じ製品名でもプランと設定でデータ経路は変わる
- 提供会社回答はURLだけで終えず、対象プラン・対象地域・回答日・契約上の位置づけを残す
- この質問票はセキュリティ保証ではなく、導入可否を判断するための証跡要求